とかい子は基本的に仕事がすき。
というか、ひまであることよりも忙しいことに充足感を覚える。
忙しいと充実はちがうから、そこは間違えないようにしなきゃな、と
日々13時間労働に励む。
そんなとかい子の上司は、いつ死んでもおかしくない感じで働いてる。
毎日3時まで働く。おうちにいるよりホテルにいる方が長い。
30分刻みでスケジュールを動かしている。
傍らで、管理者の仕事と営業の仕事と技術の仕事もする。
200ページの報告書が一晩でふたつ出来てたりする。
でも悲壮感はない。
ひょうひょうとしている。
とかい子のことも気にかけてくれて、このデスクワークが何よりも苦手な
私のために?(単純に人材がいないだけかもだが)台本なし、下準備なし、目的と場所だけ、後はなんとかしてこい!的な現場に放り出してくれる。
そういう瞬発力が試される場面は好きなので、アドレナリン出しまくって仕事している。
そんなとかい子の上司のプライベートは充実している。ように見える。
キャリアなお姉さんから、うぶなお嬢さん、いやしいやらしなお姉さま。
どなたとも長いお付き合いらしい。
そして、その傍ら、わが子と酒を酌み交わす日を待ち遠しくしている。
上司がもてる理由を考えてみた。あれだな、自己完結型で共有スキルが高いからでは?と思う。悩み事や、愚痴は、当然ある。不満もある。
だけど、それは、全部自分で回答をだしている。そのうえで、本当にこまるよね?と
悩みごとを「二人で共有化できるレベル」に調整して提示してくる。
そうなると、片方だけのもののはずなのに、なぜか、自分の問題な気がする。
自分ごとになると、なんでも人は一生懸命だから、つい、そうだねえ、と考える。
そうなると、時間の共有化が成功する。
短い時間、自分ひとりの思考の時間がなく、常にお互いのためのことをしている気分になる。
相手の方の悩み相談の時も同じだ、お互いで共有できるレベルだけ見る。
その人ととしかわかちあえないことがあるんだよ、役割分担だいじだからさ、と
私に見合う価格帯のお店で、私に合わせたお酒のチョイスをしながら話す上司。
そんなもんなんですねえと、遠慮なく肉をほおばる私。
とかい子も、その辺の男をつまみ食いばっかりしてないで、ちゃんと完食しないと、と空の皿を下げる上司。
いやいや、食われてるのは私の方です。でもなぜか、消化不良を常におこしてるんです。
美人が好きな上司なので、とかい子が範疇にはいることはまずないが、そのうち私が化粧してあげるから、化粧道具を買いそろえたらおいで、とタバコの向うで笑う。
・・・・・・食後のデザートにつままれるのはご免こうむりたい。
(ある日の上司のかばんの中には色違いの傘)