もっとも遅い初雪が日本を包んでいますね。
乾いた冬の寒さは風が吹かなければそんなにしんどくなくて、
湿った空気が冷えるのは内側に染み入ってきて、ひどく悲しくなります。
(訳:加湿器つけて窓開けんな、さみい!!)
さて、すべりこむように、男はつらいよを見てきました。
いい加減で、愉快なおじさん。肝心な所、明らかに関係が変わってしまうことを
恐れて、一番楽しい暗黙の了解を共有してばかりのとらさん。
ひょっとしたら、自分なんかと一緒になったら幸せになれないと、
どこかで思っていたからなのかもしれませんな。
時は流れ流れて、みつおが作家としてデビューしているところから始まります。
スマホを持つ高校生、見知った東京の街並み、自動改札のホームがスクリーンに
映し出されても、何故だかやはり懐かしい。
そもそも、みつおの娘がいい子すぎるんですよ。
おらんやろ、いまどきってくらい。
みつおはとらさんの映画と同じスピードで年を取ってきたせいか、
なんの違和感もありませんでした。
初恋のいずみちゃん、複数回マドンナとして登場したリリイは神保町のカフェで
ママをしていました。
ときが人を変えていきますが、思い出話は、それが、けっして変わることのない、
今はすでに失われてしまったものであれば、
もとに帰ることができるんだと、そういう話だった気がします。
変わらないものを共有している時だけ、人は過去に帰ることができるのかも
しれませんね。
さくらさんも、ひろしさんも、みんな何の違和感もなかった。
あの物語のまま、あの世界のまま、時がながれていました。
とらさん本人は過去映像でしかでてきませんが、
「いま、この場所におじさんがいてくれたら、なんていうんだろ」
という繰り返しでてくるそのセリフが、いないはずのとらさんを
何度もスクリーンに登場させてくれていたように思います。
チケットてうりの、席も決まっていない小さめの平たい空間の映画館
小さな規模感で見るべき映画でした。