ツメが伸びるのはやいねん。

都会に住むトカイ子と、田舎に住むイナカ子が、都会砂漠と田舎沼をサバイバルする日記。

感受性よ応答せよ ②

2から始まる、振り返り

どうも、とかいです。

 

梅雨のはじめをつげるような、曇天のした、
相も変わらず、よくわかってない新宿のまちを
後ろからでもよく見えるようにと無理してはいたヒールをはいて、
迷子になりかけながら急ぐこと10分

ドラマや小説で見てきた、新宿マーブルのおりにくく
入りにくい階段の前に到着した。
たばこのにおいに、通いなれた人々による同窓会のような雰囲気に
若干ひるみつつ、目立つとわかってきて来た和服の袖の中で
携帯を握りしめて、勢いで足を踏み入れる。

 

ひさしぶり、めっちゃやせたな!
と、想い人さんにかけられているセリフに応じる
私が知らない表情をしている想い人を視界の端にとらえつつ、

階段を慎重におりていく。

靴下が気になって、やはり買いなおそうと入った店内で足を取られて、
すっころび、危うく公開ストリップをするところだったこともあり、
足取りは階段初心者のそれ。

想像よりすずしく、想像していたよりもずっと
ステージが近いライブハウス。
ここに70とか50とか入るのか、それはすごいなと、
40人程度でも、夕方15時程度の電車の込み具合の

黒い室内を見渡す。

後ろがある方がいい、PA卓の前の位置に場所をとり、
ハイボールをこくこくと飲む。

想い人さんが会いたかったであろう人
会いに来た人、来てくれた人に次々と声をかけ、抱き合って再会を喜ぶ。
ライブハウスに、久しぶりに帰ってきたんだ、という人も多いだろう。

途中、大阪から私もしる想い人さんのお友達も会場に到着する。
誕生日を彼女に京都で祝っているところを途中で切り上げて、
新幹線で駆け付けた。
日曜の夜だ、明日は、否応がなしに現実の波に

飛び込まなければならないし、
飛び込める位置に戻らねばならない。

それでも、走れば間に合うの勢いで
来てくれたのだろう。
ライブハウス初心者の私も、見知ったかおに安堵する。

 

肩が跳ねるほどの、新宿三丁目のロックバーとは比べ物にならない

音圧にステージを振り替える。

 

Dear Chambersが始まる。

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ユーチューブで聞いていた、3ピースバンド
ツンツンとしたかみと、ちょっとコミカルな表情のボーカルの森さんは、
高校生の時からの想い人さんの友人で、ご近所さんだ。
歌声よりずっと低い声でMCに入る

「ずいぶんやせたな、肝臓でもやったか?」

「きっと、この人生で二度とないんだろうな、

家から500mのところに住んでいる奴のイベントに出ることなんて」

「彼が旗をあげると、久しぶりの人も、いつもの人も誰かを連れてきてくれたりするんだ」

 

ライブの始まりに感じることは、いつでも同じで
「私とあなただ」
この空間に何人いようが、はじめとかそうではないとかではなくて、
私とあなただ。
ステージに手を伸ばす、好きな曲には、好きだを全力で示す。
知らない曲の方が多い、でも、
あまりの振動に心臓のスピードごと変えてしまうんじゃないかって
思えるくらいの爆音で、初めて体感する音圧に

耳の外側に1まい膜が出てきたように
こもってしまって、強烈なまでに、私とあなただと思う。

「俺はずっともがいてた。今ももがいてる。
同じところでもがくんじゃなくて、いろんな場所や人にあってもがくことにした」
「そして、どこでもがいていても、彼やほかのお客さんがいてくれたんだ」

お前らはくそだって言いながら、チケットを買ってきてくれたんだよ

だれよりも、舞台のそでで大暴れしてて、
だれよりも飛び跳ねて、こぶし握って、喜怒哀楽の全方位を全力で
駆け抜けていた。

私の知らないあなたを知る多くの人が、ここにいるんだということに
なんて、幸せな空間に居合わせているんだろうと、
ステージに目いっぱい手を伸ばしながら聞いていた。

場面転換中、流れている音源を聞きながら、

出かけ際作っていたCDは、結局再生できなかったんだなと、

二杯は酒飲めという進言に忠実に、シャンディガフを注文。
結構量多いんだよなあ

なごりおしげに、ライブ途中で帰るなんて初めてだ、と

想い人の友人は日常へ帰っていく。

初めてのイベントはいけなかったんだ、それが悔しかったから、

絶対こようと思ってた、コロナ後、こういうライブハウスには来てなかった、

でもこのイベントは例外なんだ、

ほわほわと一枚隔てた膜の向こうから、彼らの過ごしてきた時間の

奥からつむぎだされる言葉をやはりほわほわと聞く。

 

そして、また、CDで聞いていただけの人が目の前の触れそうな距離で

叫んでいて。

 

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「もっとやればいいのにね」と、けしかけられて、

即座に否定しつつ、想い人は、ずっと叫んでた

「全部やってくれ!!」と、壁を叩いて、力の限りで今という時間の胸倉掴んで

揺さぶり続けていただ。

「僕たちは世界をかえることができない」では、後ろで聞いていた、

前のバンドのボーカルさんが、すすすすーと前にきて、

両手を挙げて、やっぱりちょっとコミカルに動き続けていた。

なんで、みんなそんなになみなみ注いであるお酒をこぼさずに、

手を上げ続けられるんだろうなあ、すげえスキルだと思う。

 

ライブの最後は、もうみんな何にも見えてなくて、

きっとステージだけだったんだと思う。

柵を超えんばかりで、手を伸ばして、現実の胸倉をつかんで引き倒してた。

たぶん、コロナのガイドライン的にはアウトなんだろうけど、

それでも、いいやって思えるものが、ここにあって、

これを否定できる言葉や理屈はないのかもしれないって。

 

そんなことを思っていたら、想い人さん上から降ってきた。

こんなに人数すくなくてもダイブってできるんだなあ、と感心して、

すげえなあって。

いつの間にか後ろに下がったボーカルの彼は、椅子の上にたって、

両手でぐっとサインをだして、ぶら下がってた。

 

変わらないでいつづけた彼が、いろんな人の目印になっていて、

ここに来れば、変わらない場所と変わらない彼がいて、

崩れそうな足元を必死に固め続けて、その場所に居続けていて。

だから、目印に集まってこれるんだろうな。

どこにも行けないかれは、きっと誰かの目指す場所になるんだろうか。

 

Dear Chambersの彼は、SEVENTEEN AGAiNを

カバーしていたこともあるそうだ。

同じように、いつか、彼らも誰かにカバーされて

呼ばれることがあるんだろうか。

その時は、想い人さんのように、

ここに踏みとどまっている、そんな人が「今」というときの

胸倉掴んでゆすぶってるんだろあ。

 

びーん、と鼓膜が息切れしているような耳鳴りを残して、

ライブは終わった。

特段声をかけることもなく、ライブハウスの階段をのぼっていく。

今回のフライヤーに使われた写真は、ライブハウスを出ていくときの

写真を使っているんだ、と言っていたのを思い出す。

12月、確かになにかに負けようとしていた三年前の冬

拳を叩きつけていた三丁目のバーで、

彼と共に聞いた曲に見送られながら、足早にライブハウスを

あとにする。

ちょっとだけ、着物の悪目立ちが恥ずかしくなってしまった。

 

10年間、ここに居続けたんだな、好きなことを好きでい続けて、

そしたらここができたんだな。

何もないと彼は、言う。何も持ってないというけれど、

だから、いろんな人があれもこれもと持ってきるのかもしれない。

 

たのしかったなあ。

 

夜パソコンをいじりながら、待っていると、いつもの様子で帰ってきた。

さけにつぶれた喉と、傷めたこぶしと、ちょとばかしの反省を土産に。

ステージにいる、主催なんて邪魔にしか思ってなかったけど、

聞いてるやつらの顔も見たかったんだって、そうかあって。

 

私のそばにいてほしいとは言わないし、

勝手に好きなところにいってくれ、は変わらない。

かえって来てくれればうれしい。

 

私の知っている、彼だなあと思ってほっとして両腕で抱きしめる。

サッカーの彼もみた、ライブハウスのかれも見た。

いろんな人が、彼を大切に思い、目印にしている

そのそばでけらけら笑っていれたらそれでいいと思う。