ツメが伸びるのはやいねん。

都会に住むトカイ子と、田舎に住むイナカ子が、都会砂漠と田舎沼をサバイバルする日記。

感受性応答せよ ①

②の前にある①

 

ユーチューブで知り、ぜひ見てみたいと足を運んだ、

劇団唐組の紅テント、花園神社での観劇記録です。

杉並区内に本部を構える唐組のチラシを、高円寺の居酒屋のいたるところで

目にし、そして、そんなにチケットも高くなく(場所代がないからかな?)

割と気軽に変えてしまった、「おちょこの傘持つメリーポピンズ」

karagumi.or.jp

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以前から、寺山修司の詩で覚えていたものもあり、

まだご存命のうちに本物を見ておかねばと、チケットを購入した。

 

神社の大きなご神木の木のした、突如として現れたテントは、

神社という場所も相まってか、本当に異世界のようで、浮世のものとは

思えなかった。

中に入ると、想像以上に狭く、あと、本当に地面に置かれた板の上に座るスタイルだった。

前後の感覚は一mもなため、どうやって足をたたんだものかと試行錯誤

しつつ、もぞもぞとしながら、首を一生懸命に伸ばす。

姿勢がよくなりそうである。 

常連さんは、クッションとか座布団を持参していたので、そういうものなのだろう。

 

舞台セットは、狭い一室で、傘の工場が再現されている。

舞台セットは見て不思議だなあと思うのは、明るいところと、

暗いところがあって、絵が空間に表れているというか、まあ、

たぶん本当にそういうものだと思うんだが、照明があること前提の

空間作成というか。このリアリティのなさが舞台芸術の独特の違和感だと

思っている。

 

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舞台は、この一曲から始まる。

状況劇場以降の初の上演ということで、森進一の結婚訴訟事件を題材にした

ものだということを知った。

この曲があまりに耳にのこって、帰りがてらユーチューブで探した。

 

引っ掛かりをさがしているんだ、と、おちょこが言う。

1970年代らしい、登場人物の喫煙率の高さだ、

本当に吸うものだから、喉乾いたりしないだろうか、なんて思ってしまう。

ふらりと、カナが現れる。

 

「メリーポピンズの傘を持たせようとしてくれた、その気持ちがうれしい」

 

怒涛のセリフで、すべてを把握することも、理解することもできない。

すさまじいほどのセリフ量で、でも、わかるという、

この力を一心に感じる。

 

「みんな違う方向を指さしているじゃない」

 

桧垣がオリに入れられたカナを逃がそうとして、撃ち抜かれる、

そのセリフが強烈だった。

「スキャンダルは終わったんだ」

 

語らないのに、雄弁だった。

空間を広げていく。

 

遺体を抱いて、花の咲くあの町へ、と、傘を開いて飛び立つシーン、

お約束だとのことだが、舞台の壁が消えた、

現実が、虚構と混ざった。

素晴らしかった、ありとあらゆる言葉で構築された時間だった。

動くとは、止まるということだと思う。

縫い留められた時間と言葉たちだった。