ツメが伸びるのはやいねん。

都会に住むトカイ子と、田舎に住むイナカ子が、都会砂漠と田舎沼をサバイバルする日記。

雑記4~秘密基地があったなら~

空の青をそろそろ忘れそうなくらい、毎日毎日あめ。

うずくまって聞く雨音は決して嫌いではなかったし、

内にこもってていい正当な理由を与えられたような気になれたから、

どちらかと言えば雨の日は好きだ。

 

いくつか鮮明に浮かぶ情景があるが、雨の日は一人暮らしを始めた日の

初めての夕方を思い出す。

その日はいつの間にかお昼寝をしてしまっていて、

目覚めるともう部屋の中は薄暗く。子どものころ作った秘密基地を作ったことを

思い出して、一人笑った気がする。

暗闇に自分の声が溶け込んでいく様子を見ていた気がする。

自分の声が、溶けた薄闇。雨の日は、あの日の薄闇を感じる。

 

きらいじゃないと、言い放った1人暮らしの夕方。

薄闇に自分の声が溶ける情景にもなんとも思わなくなって久しいのに。

雨の日は暗いせいか、その薄闇がずっとそばにある。

家にも内にもこもってしまう。

無性に泣けてくることもあれば、何かに熱中できる時もある。

ぼんやり雨音を聞いていることもあれば、

こうして文章をつづっていることもある。

 

正直に言ってしまおう。

1人暮らしは、ちゃんとさみしかった。

でも、別に実家に帰りたいとか、家族が恋しいとかではなかった。

1人でいることが苦痛でないのに、雨の日はずっとさみしかった。

皆で作った秘密基地に、いつも自分しかいないような。

そんなさみしさがあった。

だけど、雨の日は嫌いじゃなかった。この矛盾をどうしたらいいのかなと思う。

さみしい、と口にしないよう、口にしないよう。

本音のさみしいは、冗談の中に少しだけ溶かした。

誰かとともに過ごせないさみしさとは違う、雨の日のさみしさを。

 

かばんの中で軽めの金属音が響く。

ここ数日の雨の日、ふと握りしめることが増えた。

熱伝導性の性質に従って、私の想い人があったかいね、と言ってくれる

自分の体温がうつる。

なくさないようにと、キーホルダー代わりのアクセサリーとぶつかって

なじみのない音が骨を伝って耳に届く。

薄闇に溶かす音が増えて、さみしいと感じていた感情は

どうやら違う名前ではないか、と思いだした。

 

「・・・・こいしい。」

 

言葉にしてしまって、慌ててしまう。

何を言ってるんだと。あきれてしまった。

 

薄闇に言葉を溶かす。

「かえってくる場所だからね。」

誰かの言葉が薄闇に溶けたのは初めてもかもしれない。

言葉が形になったのも初めてで。

 

秘密基地だから、だれも探しに来れないから。

ここになら置いていいんだろうか。

 

手の中で熱を持つ金属と薄闇に溶ける雨の音